STORY

紙の発明は紀元前に遡りますが、世界三大発明のひとつに数えられる活版印刷の発明も古く、15世紀。この二つが組み合わさってできる壁紙がインテリアとしての用途で使われ始めたのはヨーロッパとされています。おそらくは紙の生産技術と印刷技術の向上に伴い、16世紀には広く使われるようになりました。
壁紙はそれから数百年もの長い歴史を人々と共にし、時代の文化や流行を反映しながら、各国の住まいを彩り続けてきました。例えば、19世紀のイギリスを生き、「モダンデザインの父」と呼ばれるウィリアム・モリスによる花鳥画の壁紙は、高級クラシックホテルで採用されるなど、現代の日本でも愛されています。

素材としての紙は、日本では障子や襖などの形で、ヨーロッパとは異なる美しさの室内空間を演出してきました。次第に西洋化が進み、日本でも住宅における壁紙の需要が増しますが、高度成長期の建築ラッシュで、高効率な施工とそれに合う材料が台頭したことをきっかけに、洋室の大半にビニールクロスが用いられることになります。現在の「壁紙(クロス)」は、一般的には布や合成樹脂などのものを含めた内装における壁面仕上げ材の総称となっています。

数では国産のビニールクロスが圧倒する中、嗜好性が高く高品質な輸入クロスも、インテリアにこだわりを持つ層からの確実な支持を得ています。シンプルでありながらラグジュアリーな質感を持つ素材、暮らす人の個性を表現する多様な色調とデザインなど、バリエーションも豊富です。近年は一面のみで室内の印象が大きく変わるアクセントクロスの人気も高まりを見せています。一方で、施工難易度が格段に高い輸入クロスを扱えるプロフェッショナルな職人は、国内では貴重であるのが現状です。